2014年1月20日

まずはせっかくですので、早速MusicVideoをご覧下さい。

 

 

・請けるまでの流れ

 

AYANOというポストロックバンドのライブでVJを担当していまして、このブログではインタビューシリーズという形でも取り上げているわけですが、AYANOが1/22にアルバムをリリースする、しかもタワレコとVillage Vanguardでの展開が決まっている、という事でMusic Videoを作らなくてはいけないんだけどどうしよう、でも予算が全くない!というような相談を受けまして。

じゃあ年末年始で時間もある事だし、昔の仲間を集めて作ろうか、という話になりました。

大学時代、そしてその少し後も、映像の仕事をしたりしていた事もあって、その当時一緒にやっていた仲間と久しぶりにやれるとしたら、予算がなくても楽しいな、と。

 

・チームに声をかける

 

監督は高校、大学時代とても仲が良かった後輩で、当時、東京学生映画祭にてグランプリを獲得していたり。
最近ではtoeのライブビデオの制作や、TRIPLANE、Daniel PowterのPVを撮ったりしている津田肇に声をかけました。

主な映像作品
【LIVE VIDEO】式 -toe-
【MV】TRIPLANE – Cheers To Us
【MV】DUBSTRUCTURE#9 – YOU SO BLUE
【MV】Daniel Powter – Crazy All My Life

Cameraを担当してくれた桜木も、出演のsalasaも学生時代の同級生、後輩で、みんな長年の付き合いのメンバー。

アイデアを出し合って本当に楽しく最初から最後までやれたなあと思っています。

 

 

 

・制作の流れ

 

制作の流れとしては、

12月頭   ソウダ、津田、桜木、yj(AYANO)でミーティング
12月中旬  ソウダ、yjでミーティング
撮影直前  ソウダ、津田、桜木でミーティング
12/27   撮影
12/29-1/6 編集

という感じでしょうか。

 

 

・制作の意図

 

まずは曲「golgotha」がどういう意図で作られたものなのか、yjからの解説を聞いて。

 

 

簡単に書いておくと、
タイトルになっているgolgothaっていうのは、イエス・キリストが十字架に磔にされたゴルゴダの丘から来ていて。
絶望の淵に居るキリストの気持ちのようなものがベースとなっているわけです。
AYANOというバンドは、大自然の雄大さ、壮大さであるとか、それと対比した時の人間、みたいなものがテーマとしてあって、それは死生観についての問いかけから来るものだったりするわけですが、そういった絶望の淵に居る時でも、例えば夕陽を見た瞬間に、それでも美しいと思ってしまう、みたいな感覚があって、そういった絶望であるとか、希望の瞬間であるとか、そういうものをMVでは表せればいい、というようなものがありました。
そして、制作チームとしては、やるからには映像の手法として面白い切り口の、少し変わった手触りのものが作りたい、という欲求があり、あとはやはり出来うる限りの美しい絵が撮りたい、というものもあり、手法とストーリーとロケ地を考えていった形です。
目を閉じて倒れている、或いは死んでいるのかもしれない女性からスタートし、正再生と逆再生が交互に続いていき、最後に繋がるんですが、逆再生を見ている時の気持ち悪さ、違和感、悪夢感の演出という部分もあるし、絶望に向かう道と希望に向かう道との交互の繰り返し感の演出という部分もあります。

 

 

何らかの苦難にあって、森、もしくは精神的な樹海を彷徨うわけですが、その絶望感と、最後に夕陽に魅せられる瞬間的な希望、もしくはそれはそこに向かっているのかもしれない道、それを断続的に、逆再生も含めて見せる事によって、本当はそれがどこへ向かっているのか、もしくは苦悩の死なのか希望の生への休息なのかも、本当はどれなのかという解釈もそれは見た時のその人の状況や感情に委ねられるのかもしれないです。

 

 

 

・MVって誰のものなの?

今回の事で改めて難しいなと思ったのは、MVって誰のものなの?
って所です。
割と一般的な捉え方としては、曲を作る所までがバンド側の担当で、その曲という素材を作って映像の世界観を演出するのが映像監督の仕事、バンド側は監督の方針にはあまり口を出さず、仕上がりを見るまでお任せ、というような形が多いのかもしれません。

 

 

ただ、バンド側としては、そのMusicVideoを見て、そのバンドの事を好きになる人もいれば嫌いになる人も居るだろうことを考えると、やっぱり納得のいくものを出して、そして判断してほしい、という気持ちになるはずです。

 

 

そうなるとやっぱり、バンド側からしてもこれは自分たちの作品である、と言い張れるものであるべきだし、監督側からしてもそれは同じ事です。

さらに言えば、関わる人全てがそうであるのが理想的で。

 

 

じゃあそれをどこまで摺り合わせて、より”良い”と言われる作品にするのか、それはやはりとても難しい作業です。

 

 

僕はAYANOと日頃から色々なコミュニケーションを取っているので、バンドとして絶対外したくないラインと許せるラインがかなり理解出来ているはずで、そして今回の制作チームのみんなとは付き合いの長さから言っても、同じようにかなりそのラインを理解出来ているはずで、だからこそ限られた予算の中で自分たちが納得出来る度合いのかなり高いものが出来たなあと思えています。

 

 

それぞれの欲求/マストであるラインを満たしつつ、全員の、この部分は許せないというラインをはみ出さない、というのは、やはり通常であればとても難しい作業だなあと実感しました。

 

 

 

・技術的な話

 

内容の話ではなく、撮影技術的な事を言うと、

カメラはSONYのF-55というカメラをメインで使いました。

レンタルすると、TECSとかでは4万円程でかりられます。

レンズはほとんど広角で、だいたいが35mmで撮ってます。

このカメラは180fpsでも撮れるのが素晴らしくて、冒頭あたりの倒れるシーンなんかは180fpsで撮ってます。

 

 

そしてさらに素晴らしいのは、本当に感度がいい事。

 

クレジット見てわかるかもしれませんが、照明一切使ってません。

 

撮影してて、だいたい面倒なのが照明と音声なんですが、まあMVなので今回は音声の心配が全くいらないし、国道を歩いているシーンとか見てもらえればわかるんですが、あのくらいの明かり、街灯一本とかでも十分なくらいにいい画が撮れます。

 

だから現場は、ほんとに演者+カメラマン+監督+僕、そしてテクニカルサポートの須藤さん、それとAYANOのメンバーという人数だけでした。

 

カメラも、F55なんて使った事ないので、前日に勉強しつつ、サポートの須藤さんに訊いたりしながら、というくらい。

 

 

それから、走っているシーンなどはさすがにF55を抱えて走るわけにもいかず、Canonの5Dを使っています。

レンズはFレンズで24-105mmあたりだったかと思います。

 

編集は、ソースをハードディスクで僕と津田で同じディレクトリ構造で共有して、Premiere CCのプロジェクトファイルだけ投げ合う形で進めました。

僕が粗編集して渡したんですが、まあそんな事言うのもおこがましいくらい、完成形にその原型は残ってなくて、笑、編集は完全に津田テクニックを炸裂させてくれたなあと思ってます。

 

本当はTwixtorとかかけたかったですけどね。笑

それは予算の都合上断念しました。笑

 

と、割と専門的な事をあえて書きましたが、もしも誰かの参考になれば幸いです。

関わって頂いた皆様、本当にありがとうございました。

 

AYANO “Golgotha” (Music Video)

Director : Hajime Tsuda
Camera : Ryoichi Sakuragi
Technical Support : Ichiro Sudo
Performer : salasa
Producer : Soda Uso