2013年7月4日

初めまして。ソウダと申します。

今まで色々なインタビューや対談を読んできて、批評家やインタビュアー、
メディアなどが話を聞いて記事にする事や、アーティスト同士が対談するものは多くても、プレイヤーがインタビュアーとして話を聞く、という記事は割と少ない気がしていました。

もう少し切り込んで、プレイヤーとしての視点を交えた記事が読みたい、という欲求をずっと持っていて。
そういった側面から、今後も少しずつ記事を書いていきたいと思っています。

たぶんそういう意味で目標は、アジカン後藤さんのthe future timesに近いかもしれないなと思っていて。
あれは本当にすごいなと。

そういうものを目標にしつつ、少しずつ模索していきたいと思っています。

そしてまず第一回のインタビューはAYANOというバンドです。
2013年4月から、1年を通して単独公演を4回、それもライブハウスではない場所で、
自主公演としてイベントを行っているAYANO。

これは、僕がある日のAYANOのライブの後で、
「AYANOはライブハウスというよりはどこか別の場所、例えばクラブとか
 そういう所でライブをやった方がいいだろうし、
 もっと言えばプラネタリウムとかでライブをやったらいいんじゃないかと思う。」
というような事を言ったのが発端になっていたりします。

もちろんそれはきっかけに過ぎないし、決めたのは彼らだし、
その後の事も全て彼らが動いて作ってきたものだけれど、
僕もある種の確信を持ってそう言った以上、責任を持って関わりたいと思い、
継続的に一緒に色々な事を考えたり、イベント当日はVJとして参加する事を決めました。

その頃、話を聞いてみると、彼らは”ライブハウス”での活動に疑問を感じる所があるようでした。
もちろん、箱が与えられる、という事は、自分達がライブをする事だけに専念出来る、すごく有り難い状況です。
けれど、その枠があるがゆえに、制約となってしまう事や、先入観が与えられてしまう、という事もまた事実で。

また、人が生きている中で大半の時間を割いている仕事や、周りの人間との関係など、そういったものから与えられる影響は大きくて、でも実は音楽も、こんなに音楽を消費している国も無いだろっていう位のものなのに、意外と人の考え方そのものに音楽が影響しているという実感があまり無い、そんな風に思えていた彼ら。

そこに関して、僕もすごく同感でした。
そういった事から、演奏する場所から再考し、自分たちのやりたい事の純度をより高めていこうと模索し、自分たちでイベント自体を作ろうと動き出したAYANO。

そんな中で、彼らの音楽を、そして彼ら自身の事を、深く知ってもらいたい、
知ってもらった方がもっと彼らの音楽を楽しめるはずだ、という想いから、
そして何より僕自身が彼らの事をもっと理解する為に、
ロングインタビューを敢行する事にしたのです。

僕自身も音楽のプレイヤーとして、イベントに関わるものとして、
そしてまた客観的なインタビュアーとして、
色々な角度からAYANOというバンドに光を当てられればいいなと。

冒頭のyoutubeをBGMとして流しながら読んでもらえると嬉しいです。

AYANO 左から Drum:ソル Vocal/Guitar:yj Bass:郁
2006年結成。
日常の身近にある事象、自然、人、社会などを捉え、Vo/Gt yj の「感覚」を音で描く。
ayano-web.com




AYANOインタビュー  ベーシスト:郁 編

ソウダ:
ソウダウソです。今日はよろしくお願いします。
簡単に自己紹介をお願いします。

郁:
AYANOでベースを弾いています、郁です。
榊原郁恵の郁です。笑
AYANOの紅一点でございます。
よろしくお願いします。

ソウダ:
はい。ソウダウソといいます。AYANOでは映像作ってVJをやったり、まあ皆様の相談にのる係、という。笑
それで、郁は他には?演奏以外にバンドで担当している役割ってありますか?

郁:
紙モノのデザインですね。フライヤーとか、CDジャケットとか、
公演のチケット、そのあたりのデザインをやってます。
あとは収入と支出を管理する財務大臣を担当しています。笑



—-AYANO加入の経緯

「何この人!怪しい!笑」

ソウダ:
なるほど。ではまずは、AYANOに入ったきっかけから教えて下さい。
そういえば僕、それ知らないかもしれない。笑

郁:
改めて話すの何か恥ずかしいですね。笑。
私、高校生の時、ケイオン部で、バンドを組んでたんですよ。
全員女の子のバンドを。

ソウダ:
高校の部活からだったんだ。

郁:
はい。まあケイオン部っていうか、
フォークソング部っていう名前だったんですけど。笑

ソウダ:
ほお。笑

郁:
で、その高校では、ライブ出るならここ、っていう、その高校からすぐ近くのライブハウスがあって、そこでいつもその高校の子はライブしてたんですよ。

それで私たちも例に漏れずそこでライブをしてたんですけど、実はそのライブハウスの店長とyjが仲が良くて。
その時AYANOは女性ベーシストを探してる所だったらしいんですけど、
新しい音源が出来たっていうんでyjがそれを店長に渡しに行ったら、
私がライブに出てたんですよ。

ソウダ:
たまたま郁のバンドがそのライブハウスに出演してる日だった、と。

郁:
そうです。それで、女ベース絶賛探し中!見つからない!どうしよう!この野郎!
みたいな時期だったらしくてたまたま店長さんに「今日どんなバンド出てるの?」
ってyjが訊いたら、「女の子ベースのバンドいるよー」ってなって、、見たら、、

ずどーん!!

みたいな。笑

かっこいー!

みたいな。笑

ソウダ:
自分で言うか。笑

郁:
いやいやいや。笑
そういう事だったらしい、ですよ?笑

ソウダ:
はいはい。笑

郁:
私はその時はもう、全然、、、Ibanezの、初心者セットで。笑
ほんとに何も出来ない!ルートしか弾けない!みたいな感じで。笑
でも何かかっこよかったらしいんですよ。それで話しかけられて。

ソウダ:
うん。見た目かっこいいもんね。

郁:
お!ありがとうございます!

ソウダ:
うん、まあ見た目だけかもしれないけどn(ry

郁:
すいません。笑

ソウダ:
冗談冗談。笑

郁:
で!ライブ後に話しかけられたんです。
「AYANOのyjですけども。」って。

ソウダ:
何だこいつは、と。笑

郁:
はい。笑。まさか自分がその時に、いわゆるプロ志向というか、
しっかりした活動をしてるバンドから引き抜かれるなんて思ってなくて。
普通に「何この人!怪しい!」って思って。笑

ソウダ:
まあ怪しいよね。笑。どう見ても怪しいよね。笑

郁:
怖いっていうか、警戒心丸出しで接しちゃって。
良かったら聴いてみて下さいって言われて、
その時は音源と名刺もらっただけで終わったんですけど、
肝心の音源は、帰って机の上にポンて置いてそのまま聴きもせず放置してしまって。笑
でも、その2・3ヶ月後に同じ所でまたライブをやったんですけど、
そこにまたyjが居て!!

ソウダ:
おおお!!!
え、それ何、偶然?

郁:
いや、それはサイトとか見て観に来たらしいんですけど。

ソウダ:
それで?おわ!あの人だ!と。
ストーカーの人だ!と。笑

郁:
いやいや、逆に、本気だったんだ!って思って。笑
その時にちゃんと話して、
「かっこいいと思ったんでほんとにやってほしいんですよ」
って言われて、その日にやっと、放置されてた音源を聴いて、いいじゃん!って思って。
それで後日会った時に、AYANOが生まれた理由や、表現するテーマだったり、色々詳しい話を聞いて。
その話のひとつにすごく惹かれたんです。



—-AYANOが表現するもの

「このバンドに入ったら、死生観が変わるかなって思ったんですよ。」

ソウダ:
ほう。それはどういう話だったの?

郁:
テーマの一つに、「死」がある、っていう所です。
それを聞いて、ビビっ!ときたんです。

ソウダ:
へえ!少女郁は「死」っていう部分に反応したんだ!

郁:
そうです!当時まだ10代!笑

ソウダ:
笑。その、10代だった郁が「死」というテーマにビビっときたのはどうして?

郁:
うーん、私、小さい頃からずっと、死ぬことに対して異常な恐怖心があるんです。
普通に生活している中で、例えばシャワーを浴びてる瞬間とかにぱっと
「死んだらどうなるんだろう」
って浮かんできて、頭の中が沸騰したみたいに
わーーーーーーーーー
ってなっちゃうっていう経験がよくあって。
死ぬってどういう事なんだろう、ってすごく考えてたんですよ。いつも。
そういうタイミングで「死」がテーマです、って言われたので。。
このバンドに入ったら、死生観が変わるかなって思ったんですよ。
それまで、まあ今もですけど、死ぬ=怖い事、よくわからない、
よくわからないから怖い怖い、ってなってるものを、AYANOに入ったら、
何か変わるんじゃないかなって思って。
ちゃんと向き合える、って思ったんですよね。
それが一番大きかったです。

ソウダ:
なるほど。それは今振り返るとどう?変わってきてる?

郁:
うーん、怖いのは変わってないですね。
でも、考える視点は変わってきたかもしれないです。
マイナスばっかりで考えてたのが、プラスにも考えられるようになってきたっていうか。

ソウダ:
プラス?どういう風に?

郁:
プラスっていうか、、、
それまでは、死んでしまったらそこで終わり、だから怖いし、だから悲しい、
それだけだったんですけど、今は、
じゃあどうするの?っていうのを考えられるようになった、
っていうのはありますね。

ソウダ:
それは音楽にどういう風に反映されてるんだろう。

郁:
最近はダイレクトに死と結びつくテーマの曲は少なくなってきてるんですけど、
昔 “TSUBAKI” っていう曲があったんです。
6歳の少年が、「死んだら僕の記憶はどうなってしまうの?」
って親に訊くっていう。それはすごくストレートに死についてを表現している曲で。

ソウダ:
なるほど。直接的な曲じゃなくても、色々な部分に散りばめられてたりするって事だよね?

郁:
うん。そうですね。でも加入した当初は、”TSUBAKI”みたいに生と死に直接的に結びついてる曲じゃないと
「テーマに沿ってないんじゃないか」って違和感を感じることがあったんです。
それが今は、「生と死」っていう大きなテーマがある中に、自然があって、さらに生活や社会があって・・・っていうように、生と死に内包されているものを表現しているんだっていうのが分かってきて。
一見関係ないように見える曲でも、その外側にちゃんと生と死がある、っていう事を感じながらやれるようになりました。



—-加入決断の時

「飛び込んだら今後の人生も変わって行くだろうな」

ソウダ:
なるほど。それでスタジオに入って、加入を決断する、と。
やっぱり結構悩んだ?

郁:
そうですね、待たせちゃいましたねえ。

ソウダ:
どうして時間がかかったの?

郁:
・・・
やっぱり、、
飛び込むのが怖かったんです。

ソウダ:
ああ、でもそれは、飛び込むっていう感覚がある位、
バンドに入る、っていう部分だけじゃなくて、その後の
人生を考えて、っていう所もあったって事だよね?

郁:
そうですね。高校の時に組んでたバンドはコピーメインだったし、
飛び込んだら今後の人生も変わって行くんだろうな、
とは思いました。その時はもう専門学校に進学してたんですけど、、

ソウダ:
それは音楽の専門学校?

郁:
いや、デザインですね。
その学校の課題との闘いとかも大丈夫かな、っていうのもあったんですけど。

ソウダ:
なるほど。その時はでも、音楽でやって行こう!っていう決断、とまでは行ってなかったの?

郁:
いや、元々やりたいとは思ってたんだけど、踏み切れなかったんですよ。
デザインの専門に行ったのも、手に職をつけといた方が後々いいんじゃないかってぐらいの気持ちからだったので。
でも、やりたいとは思ってましたね。

ソウダ:
なるほど。じゃあいい出会いだったわけだね。
怪しいな!っていう所から、「死」がいいテーマだ!
っていういい方向に変わっていったわけだ。

郁:
そうですね。笑



—-ソングライターyjとの関係性

「ワンマンバンドっていう言われ方をしたりするんですけど、それは別に悪い気がしないんですよ」

ソウダ:
それで、入った時のメンバーは・・・?

郁:
もう今はいないですね。
ドラムが一紀くんで、ギターが荻くん。

ソウダ:
そうかそうか。
リリィノートとAYANOが5年前くらいにMOSAiCで対バンした時って郁は・・・?

郁:
私それ覚えてるんで、もう居たと思います。
リリィの掲示板にAYANOです、って書き込みとかしてましたもん。笑

ソウダ:
掲示板ね。笑。あったねえ。笑
それで加入を決意して、まずは曲を覚えて、ライブして、曲作りをするようになって、っていう感じだと思うんだけども。
曲は基本的にyjから出て来るわけだよね。
彼は作る時にイメージが強いじゃない?
それを、その曲のテーマをメンバーが演奏する時、表現する時に、
どういう事に気をつけたり、どういう風に考えながらやってるの?
それは例えば具体的に言うと、ベースのフレーズを考えるとかそういう所にも繋がってくる事だと思うんだけど。

郁:
えーと、フレーズはyjが指定してくる事が多いので、そこでどうこう、
というのはなかなか少ないんですが、
その曲のテーマを聞いた時に、こういう感じだなっていうのが見えるんですよね。
1つのモノに対する考え方とかが、yjと似てる部分があって、まあそれはメンバーそれぞれそういう所もあると思うんですけど。
こんな感じ、っていう風に言われた時に、こんな感じ、のその中でやる、
っていうイメージなんですよね。うまく言えないんですけど。笑

ソウダ:
じゃああえて悪い言い方をすると、、
yjがこういうものを作りたい、って言って弾くだけだったら、
誰が弾いても一緒になっちゃうじゃない?
もちろん人による単純な違いみたいなものはあると思うんだけど。
まあこのへんの話は、じゃあ何で音楽やってるの?みたいな話に行き着いちゃうのかもしれないんだけど。
でもきっと、誰が弾いても同じ、っていう風に思って演奏してるわけじゃないよね?

郁:
はい。そうですね。

ソウダ:
うん。だとすると、どういう部分でそのあたりの違いを出している、
もしくは出せている、のだと思う?

郁:
なぜ私が、AYANOのベースでなきゃいけないのか、、、。
うーん、、、まず、
“汲み取り率”っていうのはあると思うんですよね。

ソウダ:
うんうん。汲み取り率か。

郁:
yjがやりたい事が100あったら、その100をどれ位を汲み取れるか、
っていうあたりですかね。

ソウダ:
うんうんなるほど。でも、、、えっと、、、そうだなあ、、
“郁がなぜAYANOのベースじゃなきゃいけないか”っていう言い方だと、
まあそりゃそうなんだろう、っていうか、うん、それは言葉で説明しづらい、
っていうのはわかるんだけど、というよりは、
“AYANOがyjとイコールではなく、AYANOである理由”の方、というか、
うーん、例えばyjの出してくるアイデアじゃないもの、
反対意見みたいなもの、を出したりするとどうなるの?

郁:
ああ!いや、昔は反対意見自体がなかったんです。
yjさんがやりたい事が100パーセントです!っていう。笑

ソウダ:
ああ、それは自分でもちゃんとそう思って?

郁:
そうです。反対もしないし、ほんとに好きな事を好きなようにやればいいじゃないですか、っていうスタンスで。
それは当時のギターの荻くんも一緒だったんですけど。

ソウダ:
ああ、郁と荻くんは、言ってしまえば
“yjのやりたい事を表現する、手足で居るよ”、と。

郁:
そうですね。でも、そのことで前のドラムの一紀くんと議論になった事があったんです。
一紀くんは、全てをyjが提案してきたもので進めるんじゃなくて、
ひとりひとりAYANOにとって何が必要かを自分で考えたりとか、
より良くする為に何かを提案したりだとか、時には出て来たものに反対したりだとか、
自我を持ってやろうっていうタイプだったので、
「反論があるんならちゃんと言えよ!」って言われたことがあったんです。
でも私はほんとに反論が無くて。笑
まあもちろん、まだ右も左もわからなかった、っていうのもあるし、
本当にそれがいいと思ってた、んですよ。

ソウダ:
うんうん、なるほど。

郁:
もちろん、今もそれはあって、変わらない部分ではあるんですけど、、、。
でも4年、5年、とやってきて、、、
yjがブレる時期がっていうのがあるんですよ。
例えば周りに色々言われたりだとか、まあそういうのを真に受けて、
そうしなくちゃいけないのかなあ、、とか。
AYANOにとって進みたい方向からちょっと逸れる事がたまにある、っていう事が、
だんだんわかってきて。
で、その時はAYANOを軌道に戻す、っていう事をやらなくちゃいけないな、
って思ってて。一紀くんから「反論があるなら言えよ」っていう風に言われてる時から、
反論、じゃないかもしれないけど確かに逸れてる時はあるな、
って思うようになって。最近そういう風にする、、しようと心がけるようになってますね。

ソウダ:
なるほど。そのあたりが “yjバンド” ではなくて “AYANO”
というものがある、っていう部分だよね。
yjが考えている事と、AYANOというバンドとして考えている事と、
ニアリーイコールではあるけれど、完全なイコールではないわけだもんね。
それはみんなで”AYANO”というものを共有していく中で進んでいる方向があって、
意図せぬ方向に進み始めたら、ちゃんとみんなで舵を取って修正して行く、
っていう事だよね。

郁:
そうですね。
昔は、yjが全部正解だ、って思ってたんですよ。
でも、一概にそうでもないな、っていうのがわかってきて。
そういう時は言うようになりました。

ソウダ:
まあその、手足となって表現する、っていう方法論自体が、
良いか悪いかは別にしても、基本的にはyjがやりたい、表現したいもの、を、
いかに最大限出来るか、っていう事を考えて進んで来たっていう事だよね?

郁:
はい。ワンマンバンドっていう言われ方をしたりするんですけど、それは別に悪い気がしないんですよ。

ソウダ:
それでいいじゃん。それがいいじゃん!って?

郁:
うん。例えば延々と同じリフを弾き続けててつまんなくないのか、とか、
そういう風に言う人がいるんですけど、
「え!全然いいじゃん!それでAYANOの為になるんだったら!」
って言う感じなんですよね。

ソウダ:
そうだね。一人強い指針を出す人が居る、っていうバンドの方が強い事、
ってのは絶対あると思うからなあ。
まあゆうたらリリィノートは
“船頭多くして 船、山に登る”みたいな所あったからね。笑

郁:
あはははは!笑

ソウダ:
僕は曲を作ってなかったけどバンドの指針を示してたし、
アレンジ面ではしゅうくん(リリィノートのギター)が統率してる感じだったし、
曲と歌詞をかいてるのはやまもと(ドラム)だったし、りょうくん(ベース)はライブのパフォーマンスと、、イケメン担当だったし。笑

郁:
でもバランスは取れてたんじゃないんですか?

ソウダ:
うん。まあそうね。でもバランスは取れてたけど、じゃあそれが強い推進力になってたか、
っていうと、それは結論としてはどうだったかわからないからね。

郁:
ああ、まあ。そうですね。



—-メンバーへの印象

「曲の意味を知った後、ソルのドラムがガラリと変わった。」

ソウダ:
あれ、ちなみにAYANOのオリジナルメンバーってどんな感じだったっけ?

郁:
荻くん、一紀くん、で、私の前の前のベースが居て、yjですね。

ソウダ:
じゃあ郁は三代目ベーシストか。郁が入ってからしばらく経って、
一紀くんからソルになったんだよね。
ソルが入ってきた時はどんな感じだったの?

郁:
どんな感じ?

ソウダ:
うん、まあソルが入った経緯はソルに訊くとして、
こちら側というか、郁としてはどんな印象を持ったの?やっぱり違うわけだよね?

郁:
ああ!それは違いましたね!ドラミングに関して言えば、
「あ!普通に弾いてれば合うんだ!!」って。笑
一紀くんは結構クセが強かったのに対して、
私は割と正確に刻むタイプなので苦労した事があったんですよ。
でもソルも正確に刻むタイプだったので、
あ、普通に弾いてればキメとかも合うものなんだなあ、っていう。笑
最初の印象はそれでしたね。

ソウダ:
一紀くんは結構頑張って合わせないといけない感じだった?

郁:
うーん、というか、いーよいしょぉ!みたいな感じだったんですよ。笑
フレーズの頭がモタるタイプなので、頭がくる前に”ぐぐぐ”っと待つ必要が
あったんです。それがソルには無かったんですよね。でも、一紀くんはそれが味だった、
っていうのももちろんあるんですけど。

ソウダ:
うん、そうだよね。まあそのへんは相性もあるもんね。

(解説:正確なリズムに対して早めに音を出す事を”走る”、正確な場合”ジャスト”、
 遅い場合”モタる”といいます。それが曲のニュアンスを醸し出したり、バンド
 全体の印象を決める事もあるので重要ですが、良い悪いというよりは、
 相性の問題である部分も大きいです。走るタイプのドラマーとモタるタイプの
 ベーシストなどだとズレているように聴こえてしまう為です。)

郁:
そうですね。ドラム探しをしていた時に、プラKのえっちゃん
(吉祥寺PlanetKのブッキング担当:水谷さん)に、ローザパークスっていうバンドのドラムをやってるソルさんっていう人がいるよ、
っていうのを聞いて、ローザのプロフィールを見て、なんとなく、全然根拠とか無いんですけど、
ビビって来たんですよ。あ!この人いい!って。

ソウダ:
女のカンだ。笑

郁:
働きましたね。笑

ソウダ:
yjの時といい、ソルの時といい、ねえ。
そういうのが鋭いタイプなんだね。

郁:
まあわからないですけどね、功を奏しているのかどうか。笑

ソウダ:
まあそれは死ぬまでわからないかもしれないけどね。笑

郁:
はい。笑。まあ、なので、私はすごく推してて。
なのでスタジオに入っても違和感とかはなかったかな。
最初入った時に、まず1回目叩いて、次に2回目に叩く時に、
「どういう雰囲気なのか、どういう空気の曲なのかを教えてくれ」
ってソルがyjに訊いたんですよ。フレーズがどうこうとかじゃなくて、
この曲はどういう意味の曲なのか、っていうのを。
それでそれを聞いて、次叩いたら、ぜんっっぜん変わったんですよ!
すごくいい方向に。それで、すごい!これはきた!って思って、
そういうのも好感触でしたね。

ソウダ:
それはいい話だねえ。でもyjってさ、そういう事を、やる前に説明したりするんじゃないの?

郁:
ああ、ある程度叩けるようになってから言ったりしますね。
タイミングはマチマチというか。必ずしもまず始めに、叩く前に、
っていう感じではないです。

ソウダ:
そうなんだね。yjが曲を持って来る時は割と出来上がってもってくるの?

郁:
最近は出来てないですね。昔はもう打ち込んで作ってきて、これ弾いて?
って感じだったらしいんですけど。最近は1個リフがあって、(リフ=
リフレイン。その曲の中心となるような印象的なフレーズの事)
みんなでジャムって、いい所があったらそれを抜き出して、
みたいな感じが多いです。

ソウダ:
なるほどね。じゃあそのソルのエピソードの時っていうのは、
新曲ではなくて、既存の曲があって、それを演奏する時、って事だよね。

郁:
はい。はい。そうです。

ソウダ:
うんうん、それはいつ位だっけ?

郁:
加入したのですか?いや、全然まだ最近ですよ。
1年ちょっと前くらいじゃないですかね。

ソウダ:
じゃあそれこそ、Art Your Lifeの活動時期になってくる、
ちょっと前くらい、っていう事、かな?

郁:
そうですね、割と早かったですね!その半年前、とか、
その位ですね。



—-バンド方針とそれぞれの思惑

「アート寄りのライブになる事で自分の強みが無くなってしまうかもしれない怖さがあった」

ソウダ:
うんうん。そのあたりの、ソル加入、とか、Art Your Lifeとしての活動に舵を切るタイミングの時とか、そのあたりは僕もまだ関わり始めというか、まだ関わってない位というか。
まあいくつかアイデアを提案してたけど、まだ一緒にやっていこうというよりはアイデアを投げただけ、みたいな状況だったけど、その時期のバンド内はどういう雰囲気だったの?

郁:
まずソウダウソさんが、yjにプラネタリウムでやったらいいんじゃない、
みたいな事を言って、それでyjからプラネタリウムでやろうよ、
って言われた時に、普通にいいじゃん!面白そう!確かに!って思って。
ずっと天井の高い所でやりたい、って思っていて、AYANOの空気感を充満させられる場所で、っていう風に思ってて。

ソウダ:
なるほどね。みんなで話してる時とかにたまに、天井の高い所がうんぬん、
みたいな話が出るのは、そのへんの想いがあって、なのか。

郁:
はい。なんか、お客さんが多い、っていう意味の広い場所じゃなくて、
空間として広い所でやってみたい、って思ってた所もあるし、単純に面白そうだなって思ったのもあるし。
それで、プラネタリウムでやる、
っていうのが決まったから、だからそこからトントンと、この”Art Your Life”が進んでいったという。

ソウダ:
じゃあそれがきっかけで、何かテーマを持って、1年間一貫してやった方がいい、みたいな方向になったわけだ。

郁:
そうですね。プラネタリウムは完全にその起源でしたね。
全然抵抗は無かったです。

ソウダ:
ふむふむ。でも、そこから、色々と模索していって、結果的に少しライブハウスを離れて活動しよう、っていう流れになっていくわけじゃない?
そのあたりを含めて振り返るとどう?

郁:
ああ、抵抗無かった、って言いましたけど、
エンターテイメント的なライブからは離れたいんだけど、
っていう事を聞いた時は、、、
私は結構、好きなんですよ。

ソウダ:
エンターテインメント、をする事自体が?

郁:
はい。エンターテイメント、観るのも、やるのも、嫌いではなかったので。
ここでばーっ!と前に出たら、お客さんがわーってびっくりして、とか、
こういう風に動いたらかっこよくて、とか。そういうのが好きだし、、
私の味だと思ってたんです。

ソウダ:
まあそうだね。郁は動きもかっこいいし、絵になるし、お客さん的にも
それは楽しいもんね、絶対。

郁:
はい。そこから離れるのが怖かったんです。アート寄りのライブ、
になる事によって、派手なアクションとかも必要無くなるし、、、

ソウダ:
自分の強みがなくなってしまうんじゃないか、と。

郁:
そうなんですよ。それが怖かったのはありました。
でも結局、それよりも面白そう、が勝ったから、やってみようと思ったんですよね。
それで実際プラネタリウムでやってみて、、
それがまあ!それがほんとに良かったんですよー!笑

ソウダ:
あはは!笑。すごい嬉しそうな顔。笑

郁:
ねえ。笑。もうすごい緊張したけど!すごい楽しかったんです。
それに、イチから色々準備して、フライヤー用意して、チケット用意して、、
って、すごい大変だったけど、そういう事してる時ってすごく楽しくて。
だから、、、すごい楽しかったです!!

ソウダ:
小学生の感想か。笑

郁:
あはは。いや、ほんとやってよかったなって思ったし、
これからもやっぱり続けたいな、と。



—-今、そして未来

「シンプルになりました!」

ソウダ:
そういう意味でいうと逆にライブハウスの、、
まあもちろん完全にやらなくなる必要はないと思うので、
ライブハウスでの活動はそれはそれでまた、改めて楽しめたりとか、
盛り上がるライブってのがあったりしても良いんじゃないの?

郁:
そうですね、まあでも、自分としてそういう部分が欲しいなら、
別のバンドやればいいじゃん、って思ったんですよね。
AYANOじゃなくて。

ソウダ:
なるほどね!そういう風に思うんだね。

郁:
そうですね、それもアレなんでしょうね。yjのやりたくない事はやらない、
それで自分がやりたいなら別でやればいいじゃん、っていう。

ソウダ:
そっかそっか。でも、それアリなんだ?別のバンドを組むなり入るなり。

郁:
ああ、全然アリですね。yjも別に、やりたい事あったら別のバンドやればいいよ、って言うし。
まあ実際それどころじゃないですけどね!笑

ソウダ:
そりゃそうだね。笑。
それで、7月の公演に向けてはどうですか?
違いをみせたい所もあるだろうし、曲順はもちろん、新曲もあるし、
場所も演出も出演陣も変わってくるわけで。

郁:
そうですね。弦楽隊が入って来るのは楽しみですね!
広がりは出ると思うし、そもそも入ったら素敵だなって思う箇所があったので、
そうですねえ、、、ほんと楽しみです!
ってまた小学生みたいな事しか言えてないな、、、。笑

ソウダ:
ほんとそうだね。笑

郁:
でもなんかだから最近ほんとうに楽しくて。
ほんとすきな事すればいいじゃん!って。
楽しいんですよ!すごく!!笑

ソウダ:
あはははは。笑。吹っ切れた感じだ?

郁:
そうですね。前は、、何かヘンな苦悩と戦ってたというか、
戦わずして良かったものと戦ってたというか、、、。
まあそういうものと戦ってきたから今があるんでいいんですけど、
うん、なんか、、、
シンプルになりました!
やりたい事はやる、やりたくない事はやらない。

ソウダ:
うんうん。いい事だね。
それじゃあ7月公演、ほんと楽しみだね!

郁:
はい、楽しみです。

ソウダ:
僕も楽しみです。よろしくお願いします。

郁:
よろしくお願いします!


バンド×弦楽隊×映像が彩るホールコンサート
AYANO four season tour
“Art Your Life” 〜summer〜

2013年7月20日(土)
武蔵境 武蔵野スイングホール

開場 / 17:00 開演 / 18:00
前売 / ¥2800 当日 / ¥3200

チケット申込はe+ こちら から
もしくはオフィシャルサイト こちら


後記

こうしてインタビューを記事にする事は、僕自身にとって、少しチャレンジングな試みだとは思っていて。
もちろん、インタビューというものはあまりやった事が無いというのがそもそもあるし、
プレイヤーとしての目線、メディアとしての目線、批評家としての目線、そういったものなんかを意識し始めると、だんだん何が正しいのかわからなくなってきて。
でもまずは思うまま、自分の訊きたい事、知りたい事を率直にぶつけていこうと思っています。

今回は一人ずつ別々に話を聞いて、三人分終わるまで内容を知らせない事で、
メンバーそれぞれが考えている事をそれぞれが後で読んで、メンバー同士の理解がまた深まったり、考えを確認し合えたり、そういう事にも繋がっていけばいいなと思ってます。

AYANOに関しては継続的にインタビューをしていこうと思っているし、
インタビュアーとしてはまだまだ全然これからだけれど、
これを読んでインタビューをされたい、という人がいれば、
バンドマンじゃなくとも、どんな人でもいいので、是非連絡をもらえれば嬉しいです。

次回はドラマーのソルへのインタビュー。
そして最後はボーカルのyjへのインタビューへ。
同じ出来事を、三つの視点から切り取る、興味深い話が続きます。
乞うご期待。